在庫持ちすぎ注意!~調達の際に取り組みたい3つのポイント~(医療・介護の経営コラム19)

あなたの医療機関や介護施設では医薬品・医療材料などの調達をどのように行っているでしょうか。調達したにもかかわらず、長期間にわたり払い出しされず滞留している物はありませんか。大きな医療機関や介護施設では在庫管理システムの導入により在庫管理がオートメーション化され、滞留在庫が発生しない環境になっている場合もあるかもしれません。しかし、大半の医療機関や介護施設では完全オートメーション化などはされておらず、調達担当者や各部署の在庫担当者が現在の払い出し状況を管理しながら調達を行っているのが現状ではないでしょうか。

医療機関や介護施設においては、処置や手術などの医療行為の際に必要な医薬品や医療材料をいつでも使用できるように準備しておく必要があります。必要な医薬品や医療材料が欠品してしまうと、最悪の場合は利用者の生命に関わる事態になることもあるからです。そのため、同じ材料であっても患者の特性に適応できるように、様々な規格を用意しておく必要があります。また、同じ効用や機能を持つものであっても、医師の使い勝手などから使用する医薬品や医療材料が異なることがあり、場合によっては医師の都合に合わせた医薬品や医療材料を確保していることもあるのです。

このように、医療サービスのラインナップの増加、医療の質の向上、患者満足度の向上などを行うためには様々な材料が必要になるため、在庫の種類や量はどうしても増加してしまう傾向にあります。使用する材料を欠品させることなく保有しておくことが、医療サービスの確実な提供につながる場合も多いのです。しかし、「欠品させることなく保有する」ということを経営的な視点で見ると、医業収益を獲得するために医療サービスを提供する際に使用する医薬品や医療材料を「前もって購入しておく」という行為であるため、購入したにも関わらず長期間又は永久に使用されずに在庫として残る材料もあるのです。厳しい見方をすれば、それは貴重な経営資源であるキャッシュを浪費してしまったということですから、適正な材料調達や在庫管理は医療機関や介護施設の経営を左右する重要な活動のひとつといえます。今回はそんな材料調達を上手く行うために取り組みたい3つのポイントをお伝えします。

1.日々の材料の使用頻度を把握する

それぞれの医薬品や医療材料が日々どのくらいの使用(払い出し)実績があるのかを把握し、使用実績ごとに分類分けを行うことが重要です。例えば、下記のように分類分けをすることができます。

Aランク…毎月払い出し実績がある(1か月に1回は発生するイメージ)
Bランク…数か月に1回程度しか払い出し実績がない(発生頻度:数か月に1回は発生するイメージ)
Cランク…複数年に1回程度しか払い出し実績がない(発生頻度:1年に1回未満しか発生しないイメージ)

このようにランク分けを行うとそれぞれのランクにおいての調達方針を明確に設定することができます。例えば下記のように調達方針を設定することができます。

Aランク:欠品防止のため安全在庫を考慮して発注する。購入ロット単位を大きくして購入単価を下げる。
Bランク:使用実績に見合った適正な在庫量を設定する。各材料に最適な購入ロットを検討する。
Cランク:払い出し分を発注することで過剰在庫を防止する。購入単価は高くても購入ロットを最小にする。

このように、設定した調達方針に基づいてそれぞれのランクの材料を調達するだけで、キャッシュの回収期間を短くすることができます。Aランク材料が多い方がキャッシュの回収が良いことは言うまでもありません。そのため、先述した医師の使い勝手などの理由で、同じ効用や機能でありながら様々な種類の医薬品や医療材料を購入している場合は、それらを統合できないか検討を行うことが重要です。材料を統合した方が、使用頻度のランクをAランクに近づけることができます。結果的に購入単価も安くなり、在庫が滞留するリスクも少なくなります。調達担当者は材料の使用実績を把握し、医療行為に支障を来さないレベルで材料の絞り込みを行うことが必要です。

2.使用頻度に見合う購入ロット数を選択する

Bランク・Cランクなど、使用頻度が1か月に1回に満たない材料については、大きなロットで購入しないようにすることが重要です。使用頻度が少ない材料を大きなロットで購入してしまうと、多くの滞留在庫を抱えてしまうことになりますし、材料購入のために支出したキャッシュの回収にも長い時間を要するからです。

当然ですが、大きな購入ロットの方が購入単価は安くなり、個々の材料で見ると安く仕入れることができます。しかし、経営上は「支出した金額を早期に回収する。必要な分だけを購入して過剰な在庫をなくす」という考えが重要です。調達担当者は材料仕入先の卸業者やメーカーとの交渉を地道に行いながら、それぞれの材料の使用頻度に見合った購入ロット数で調達する取り組みが必要です。

3.発注から納品までの時間を短縮する

発注から納品までの期間をリードタイムといいます。調達担当者はそれぞれの材料におけるリードタイムを把握し、リードタイムを少しでも短くするための取り組みを行うことが重要です。リードタイムが長ければ欠品が発生してしまうリスクが高くなるため、多くの在庫を抱える必要が出てきます。その結果、事前に多くのキャッシュを支出させてしまうことになるのです。反対に、リードタイムが短いほど施設内に抱える在庫量は少なくすることができますし、欠品が発生するリスクも減少します。もちろん事前のキャッシュの支出も最小限に留めることができます。継続して調達する必要がある材料の場合はリードタイムの短縮化は特に重要です。卸業者との交渉や物流ルートの変更など、リードタイム短縮化に向けた日々の取り組みが求められます。

今回のコラムのまとめ

今回は材料調達を上手く行うために取り組みたい3つのポイントをお伝えしました。医薬品や医療材料の調達を上手く実施する第一歩は日々の材料の使用頻度を把握することです。全ての材料を同じ方法で調達していては多くの滞留在庫を抱えてしまうことになります。そのため、それぞれの使用頻度を把握し、各材料に相応しい調達方針で行うことが重要です。また、最適な購入ロット数を選択するための取り組みや、リードタイムの短縮化に取り組むことで「調達のために支出したキャッシュを早期に回収する。必要な分だけを購入して在庫を削減し浪費を防ぐ」ことができます。あなたの医療機関や介護施設においても調達に関してできる取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。

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